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ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間』(Twin Peaks: Fire Walk with Me)とは、デヴィッド・リンチ監督、リンチ、ロバート・エンゲルス脚本による1992年のアメリカ合衆国のサイコスリラー映画である。この映画はリンチとマーク・フロストが製作したテレビシリーズ『ツイン・ピークス』(1991年~1992年)のプロローグとしてもエピローグとしても鑑賞することができる。この映画はテレビシリーズ最大の謎であった、テレサ・バンクスパメラ・ギドリー)殺害の捜査と架空の町ワシントン州ツイン・ピークスの人気者の高校生ローラ・パーマーシェリル・リー)最期の7日間という2つの関連した殺人事件を描いている。また、この映画でデイル・クーパーカイル・マクラクラン)捜査官のシリーズ完結時の運命も明らかにされた。そのため本作は前日譚と称されることもあるが一般的な続編としての内容も含まれている。

テレビシリーズの出演者のほとんどが映画にも登場しているが、ローラの親友ドナ・ヘイワードを再び演じることを拒んだララ・フリン・ボイル(代わりにモイラ・ケリーが演じた)やスケジュールの問題で降板したシェリリン・フェンのような例外もある。また、テレビシリーズでデイル・クーパー特別捜査官を演じたカイル・マクラクランもイメージの固定を恐れて出演をためらったため映画での登場シーンは当初の予定よりも少なくなっている。

1992年のカンヌ国際映画祭で『ローラ・パーマー最期の7日間』が上映されると観客からブーイングが起こりアメリカ合衆国では評判も悪かった。テレビシリーズ打ち切りの1年近く後に公開されたことや『ツイン・ピークス』シリーズのファン向けに作られ初めての観客にはわかりづらいことなどから興業的にも失敗した。しかし日本では高い収益を上げた。

あらすじ編集

ふたりの売春婦とバスの運転手を逮捕していたチェスター・デズモンドゴードン・コールからの連絡を受ける。コールはディア・メドウの町で起きた謎多きテレサ・バンクス殺害事件を捜査するよう命じた。チェスターは新しいパートナー、サム・スタンリーと組んでダンサーのリルから手掛かりを得る。

地元警察との衝突の後、安置所でテレサの死体を見たデズモンドとスタンリーは、指輪が消えていることに気づき、左手薬指の爪の下に"T"と書かれた紙片を発見した。デズモンドとスタンリーはテレサの直近の行動について彼女が1ヶ月働いていたハップの店で聞き込み、「La nuit est le bon moment(夜がふさわしい時だ)」とフランス語を話す少女、連れの老人、ジャックとイレーネから情報を得た。それからふたりはテレサが住んでいた、カール・ロッドが所有するファット・トラウト・トレーラー・パークの調査に赴く。自分の目的を果たしたスタンリーはディア・ミドウを離れ、デズモンドは残って捜査を続ける。デズモンドはチャルフォントのトレーラーからテレサの指輪を見つけるがその後彼の姿を見たものはなかった。

その一方、2月6日、同じ瞬間にフィラデルフィアのFBI本部に2年間行方不明になっていたフィリップ・ジェフリーズ捜査官が姿を現した。彼は見てきたものについてゴードンに話したがジュディのことは話したくないと言った。ジェフリーズはコンビニエスストアの上の部屋で別の世界から来た男、ボブ、ミセス・チャルフォントとその孫、ジャンプする男、ふたりの木こり、電気技師らと再会したことを思い出した。ジェフリーズはどこかへ消え、デイル・クーパー捜査官が公園で失踪したデズモンドの捜索のためディア・ミドウに派遣される。クーパーがデズモンドの車のフロントガラスに書かれた「Let's Rock」という文字を見ているとマーガレットがカールにお湯を差し出した。テレサ・バンクス事件の手がかりは途絶えてしまう。

しかしクーパーには殺人者が再び動き出すことが分かっていた。

その1年後、ツイン・ピークスにおいて、殺害される7日間前のローラ・パーマードナ・ヘイワードと学校に向かっていた。ローラはコカインを吸ってジェームズ・ハーリーと戯れあった。放課後、ローラはハーリーと実際のボーイフレンド・ボビー・ブリッグスとの違いについてドナに話して聞かせた。ローラは秘密の日記からページが破られていることに気づき友人ハロルド・スミスのそのことを話してボブの仕業だと告げた。ボブの存在を信じないハロルドに怒りを感じたがローラは日記を彼に渡した。

一方、クーパー捜査官は同僚のアルバート・ローゼンフィールドFBI捜査官に殺人者が再び動き出すだろうと話、被害者になると思われる人物の特徴を話した。食料の宅配サービスをしていたローラはミセス・チャルフォントとその孫に会う。ミセス・チャルフォントはローラに絵を渡し、孫は「マスクの後ろの男」がローラの部屋にいると告げた。残りの食事の配達をシェリー・ジョンソンに任せたローラは家に帰ってボブと対面する。恐怖に駆られたローラが家から飛び出すと家の中から父親のリーランドが姿を現した。このときローラはリーランドがボブかも知れないと気づいたのであった。

キャスト編集

削除されたシーン編集

シリーズのブルーレイリリースの際、92分の劇場未公開映像が収録された。劇場版に登場しなかった様々なテレビシリーズのキャラクターが登場し、シリーズのエンディングを拡張している。この作品は『ツイン・ピークス もうひとつのローラ・パーマー最期の7日間』と題された。

製作編集

ツイン・ピークス』が打ち切りになって1ヶ月ほどのち、フランスの会社CIBY-2000の出資により3部作契約の1作目の映画をデヴィッド・リンチが制作するかもしれないというアナウンスが流れた。しかしながら1991年7月11日、リンチ/フロスト・プロダクションズのCEOケン・シーラーは、シリーズの主人公デイル・クーパー特別捜査官を演じたカイル・マクラクランが出演に興味を示さなかったことから映画の製作は行わないと発表した。ひと月後、マクラクランは出演を決意し企画が再開された。

この映画には『ツイン・ピークス』シリーズのレギュラー、ララ・フリン・ボイルシェリリン・フェンが出演していない。このときはふたりの女優の不在がスケジュールの問題で片付けられたが、1995年のインタビューではフェンが「第2シーズンの終わり方にはとても失望していました。『ローラ・パーマー最期の7日間』については自ら出演しないことを選択しました」と本当の理由の明かしている。フェンのキャラクターは脚本から削除されボイルはモイラ・ケリーが後任となった。マクラクランが出演を渋ったのもセカンドシーズンにけるクオリティ低下が原因で、「デヴィッドとマーク(・フロスト)はファースシーズンのあと姿を消してしまい私たちは皆見捨てられたような気分だったと思います。だから『ローラ・パーマー最期の7日間』が来た時も怒りを感じたのです」と話した。マクラクランは小さな役割を要求し、リンチと共同脚本のロバート・エンゲルズは脚本を書き直してテレサ・バンクス事件の捜査を当初の計画であるクーパーではなくチェスター・デズモンド捜査官に担当させることになった。マクラクランが撮影に費やしたのは5日間のみであった。

『ツイン・ピークス』シリーズとのもうひとつの大きな違いは共同作者マーク・フロストの不在であった。セカンドシーズン放映中から終了後にかけてリンチとフロストの関係は悪化していた。フロストは自身の映画『ストーリービル/秘められた街』の監督に取り掛かったため『ローラ・パーマー最期の7日間』ではリンチと仕事をしていない。

撮影は1991年9月5日からワシントン州スノコルミーで始まり、4週間のワシントン州における入念なロケと4週間のカリフォルニア州ロサンゼルスにおけるセット撮影及び追加ロケにより、同年10月に終了した。ワシントン州シアトルでの撮影が長引き、列車でのローラの死は撮影最終日となる10月31日にロサンゼルスの防音スタジオで撮影せざるを得なくなった。

テーマ編集

リンチは『ツイン・ピークス』の映画を作りたかった理由としてインタビューで「『ツイン・ピークス』の世界観をどうしても去ることができませんでした。表面は輝いているが内側では死んでいるという、ローラ・パーマーのキャラクターと矛盾に恋をしたのです。彼女が生き、動き、話すのを見たかった」と語り、さらに「まだやれることがある」からだとも話している。ローラ・パーマーを演じた女優シェリル・リーもこの思いに理解を示し、「フラッシュバックだけで生きているローラを演じたことはありませんでした。映画のおかげでついにキャラクターのすべてを演じきることができました」と述べた。リンチによればこの映画は「近親相姦被害者の孤独、恥、罪悪感、混乱と絶望。父親の苦しみ ― 内面のせめぎ合い」を描いているという。

公開編集

『ローラ・パーマー最期の7日間』はテレビシリーズとはかなり対照的な評価を受けた。この映画が1992年カンヌ国際映画祭で上映されると観客からブーイングが起こりほぼ満場一致で批判された。「シカゴ・サンタイムズ」におけるロジャー・イーバートによれば、本作は全肯定するかその正反対かという両極端の評価しかなかったという。カンヌにおけるCIBY-2000のパーティでさえ失敗した。リンチによればフランシス・ブイグ(当時のCIBY社長)はフランスでは評判が悪く映画祭での本作への批判を加速させた。

アメリカの配給会社ニュー・ライン・シネマは1992年8月28日にアメリカでの上映を開始した。最初の週に691館の上映で180万USドルを売り上げ北米では合計410万ドルの興行収入に達した。テレビシリーズ打ち切りから1年近くが経過していたことやシリーズ初見の観客が理解できなかったことでアメリカ合衆国では失敗に終わった。

インターネット・ムービー・データベースでは、低い評価と興行収入にも関わらず高い支持を受けている。映画は5つのサターン賞とふたつのインデペンデント・スピリット賞(ひとつはシェリル・リーの主演女優賞)にノミネートされた。この映画が唯一獲得した賞はアンジェロ・バダラメンティの音楽であり、インデペンデント・スピリット賞、サターン賞、ブリット賞を受賞した。

批評家の反応編集

批判的なレビューの中には「ニューヨークタイムズ」のジャネット・マズリンの「リンチ氏のとんでもないグロテスクさも目新しさを失った」といった意見があった。「タイムズ」のヴィンセント・キャンビーも「これは史上最低の映画ではない。そう見えるだけだ」と賛同した。「バラエティ」誌のレビューにおいてトッド・マッカーシーは「結局のところあのローラ・パーマーはそれほど面白くもないし魅力のあるキャラクターではない。クライマックスよりはるか前にうるさいティーンエイジャーになってしまった」と批判した。「USAトゥデイ」は4点満点中1.5の評価を付け「病的に面白みのない代物」と呼んだ。

肯定的なレビューの中にはイギリスの雑誌「Sight & Sound」のキム・ニューマンによる「この映画の多くのホラー場面...これまで国内で作られた1980年代から1990年代のホラーがいかに整然となったかがわかる」というものがあった。マーク・カーモードは本作を「リンチの傑作」と絶賛した。「スラント・マガジン」は4点満点の評価を与え100本の必見映画リストに加えた。

その後と続編編集

本作の撮影監督ロン・ガルシアによれば本作は日本の、特に女性たちに大きな支持を受けたという。マーサ・ノーチムソンはリンチ映画についての著書で「日本人女性の熱狂は、抑圧的な社会での苦しみとローラとの一致を見たことによる満足から来ているのではないかとリンチは考察した」と書いている。日本で公開されると劇場には長蛇の列ができた。リンチは当時を振り返って「映画は商業的ではなくたくさんの人に嫌われてしまいました。私はこの映画が大好きです。しかし様々な障壁がありました」と語り、編集のメアリー・スウィーニーは「観客は皆テレビ版と同じものを求めていましたがこの映画は違いました。デヴィッド・リンチ映画だったのです。観客は怒りました。裏切られたと感じたのです」と話した。リーは「映画が公開されてから、数多くの、近親相姦の被害者の方たちが私に連絡をくれました。苦痛を和らげることができたのならこの映画を作ってとても良かったと思います」と述べ映画への誇りを顕にした。

『ローラ・パーマー最期の7日間』公開後、リンチはシリーズを締めくくるための続編2本を制作すると報じられた。ところが2001年のインタビューで、彼は『ツイン・ピークス』は「完全に終わった」と話した。2014年10月、ショウタイムで2016年に限定シリーズとして復活すると発表された。しかし公開は2017年まで延期された。

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